| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-034 (Poster presentation)
群集に含まれる生物種における数と組成の形成機構の解明は生態学の根本的な問いである。これまで様々なパターンとプロセスが観測・実証されてきたが、近年、群集形成における遺伝的多様性の重要性が高まっている。遺伝的多様性は生物における機能形質の多様性を創出し、関連する生物群集に波及する可能性がある。そのため群集形成と遺伝的多様性の間にあるパターンの解明は、生物集団の群集形成の理解に役立つ可能性がある。しかし、群集と遺伝的多様性を考慮した研究の多くは植物とそれに関連する群集が対象であり、哺乳類‐寄生虫群集では非生物的要素と寄生虫群集間の検討にとどまっている。
これらの問題を解決するために、モデル動物としてアカギツネ(キツネ)に着目した。キツネは、世界で最も分布域の広い食肉目の1種であり、北海道でも一般種である。高い適応力を持ち、様々な環境に生息するため、多様な環境下における寄生虫群集と遺伝的多様性の関連性を検出できる可能性がある。
本研究の目的は1)宿主個体間の遺伝的距離は各寄生虫群集の非類似度と相関するのか、2)寄生虫群集の非類似度に影響を与える要因の中で、宿主の遺伝的要因はどの程度の重要性を持つのか、3)それらのパターンは寄生虫分類群によって異なるのか、を解明することである。
北海道全域におけるキツネ85個体を用いて、その腸管内寄生虫(蠕虫:線虫、吸虫、及び条虫)群集の解析を行った。キツネの遺伝解析は、MIG-seqを行った。さらに、環境要因として、景観要因と気候要因をそれぞれGISで解析した。
その結果、全寄生虫種を解析に用いた場合、宿主個体間の遺伝的距離は寄生虫群集の非類似度と有意な正の相関がみられた。しかし、寄生虫群集の非類似度に影響を与える要因の中で、宿主の遺伝子的要因の重要性は低く、景観要因や気候要因の重要性が高いことが示唆された。また、これらのパターンは寄生虫の分類群によって異なっていた。