| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-035 (Poster presentation)
地球温暖化に伴う昆虫類の深刻な絶滅リスクが懸念されている。昆虫類は重要な生態系機能を担うため、温暖化への応答解明は不可欠な課題である。近年、温暖化に対する新たな普遍性の高い応答として体サイズ縮小が注目されている。体サイズは、生存や繁殖に関与する根本的な機能形質であり、集団の存続にも影響することが考えられる。そのため、温暖化に伴う体サイズの変化パターンやそれに寄与する要因の解明が求められる。しかし、温暖化進行下の昆虫の体サイズ変化パターンを長期的に検証した研究は限られており、特に以下の限界点が挙げられる。1)限られた空間スケールにおける単一集団での検証に留まる、2)体サイズに対する温度の影響の実験的検証と野外でのパターン検証が乖離してきた。結果として、体サイズ変化に寄与する要因やメカニズムの理解は進んでいない。これらの課題を解決すべく本研究では、過去18年間に国内7地点で採集された1,777個体のクロツヤヒラタゴミムシの標本解析と、現生個体の飼育実験という2つのアプローチを採用し統合した。広域標本解析により体サイズの時間変化を復元し、時系列モデルで気温と植生被度の寄与を推定した。さらに温度操作飼育実験で、温度上昇に対する可塑的な体サイズ変化と、集団間での温度上昇に対する遺伝子発現レベルでの応答の違い(局所適応)の有無を検証した。その結果、5/7の集団で気温上昇に対して体サイズが縮小するという共通性の高いパターンが確認された。一方で、植生被度の影響で体サイズが増大傾向を示す集団もあった。そして飼育実験から、温度上昇に対して可塑的に体サイズが縮小することが示唆された一方で、集団間で温度上昇に対する発現プロファイルにほとんど違いはなかった。以上から、表現型可塑性が主として寄与した温暖化下の体サイズ縮小が広域で存在する一方で、局所環境要因の影響でその傾向が反転しうることが示唆された。