| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-039 (Poster presentation)
温暖化に伴う表層高水温化と底層貧酸素化は湖沼生態系に大きな影響をもたらす。特に、冷水性魚類は、適水温かつ十分な溶存酸素を得られる水深幅が強く制限される。一方で、貧酸素環境の発達は空間的に不均一になることがあるため、それに従って冷水性魚類の分布が湖沼内で偏在し、その影響は捕食圧の空間的差異を生み出し、食物網構造にまで及ぶ可能性がある。そこで本研究では不均一な湖内溶存酸素環境の発達が、冷水性魚類の水平・垂直分布の変化を介してトップダウン影響を空間的に変える可能性を検証した。具体的には、高水温、貧酸素環境に対する冷水性魚類(ヒメマス、ニジマス)分布の反応性を日光市湯の湖(最大水深13m)で調査した。湯の湖の湖盆は沖合水深6.8mに存在する尾根地形により南北に分断される。水質調査の結果、夏季に底層貧酸素(≤2 mg/L)と表層にヒメマスにとっての高水温(≥13℃)が形成され、北湖盆の溶存酸素濃度は南湖盆と比較して平均0.6 mg/L高いことが明らかになった。さらに、魚群探知機の結果から魚類の鉛直分布は溶存酸素濃度2 mg/L以上かつ水温13℃以下の水域に制限されていることが示された。また環境DNAの結果からヒメマスの水平分布は8月から10月に南湖盆と比較して北湖盆に集中していることが示された。これらの結果は、ヒメマスが高水温と底層貧酸素が発達する時期に、より溶存酸素濃度が高い地点に局所的に集中したことを示している。また、南湖盆では動物プランクトン種の密度が北湖盆と比較して最大1.6倍高かった結果を合わせると、ヒメマスの局所的な分布は、動物プランクトンに対する捕食圧に湖盆間で差を生み出した可能性が示唆された。