| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-040 (Poster presentation)
陸上生態系においてミミズをはじめとする大型土壌動物は、有機物分解や土壌構造の改変を通じて物質循環や土壌形成を支える基盤的な生物群である。近年、日本各地で進行しているニホンジカの増加による下層植生の衰退や踏圧による土壌物理性の変化など、森林環境の改変が顕在化しており、大型土壌動物の生息環境にも影響を及ぼす可能性が高い。しかしながら、シカ増加が大型土壌動物群集にどのような影響を与えるのかを広域的かつ土壌深層まで含めて検証した研究は国内では限られている。福井県では南部から北部にかけてシカ密度の勾配が形成されていることから、本研究ではこの密度勾配を活用し、県内のスギ林および広葉樹林の合計29地点を調査した。なお,複数年および複数季節にわたり調査を実施した地点については,解析において誤差項として扱った。大型土壌動物はTSBF法に基づき、各地点に設定した40 mトランセクト上の5地点から25×25 cm区画を深さ30 cmまで10 cmごとにハンドソーティングによって採取し、同定・計数した。さらに、環境省公表の2014年および2022年のシカ推定密度最低値を指標として用い、密度増加に対する応答のタイムラグも含めて解析した。その結果、群集構造は土壌深度に応じて変化し、両年度のシカ密度も群集構造に影響を及ぼしていた。大型土壌動物の総個体数および出現目数は両年度のシカ密度増加にともない減少した。特にミミズは2022年のシカ密度の上昇では変化しなかったが、リター層を除く全層で2014年のシカ密度の上昇とともに減少していた。以上より、シカの増加は大型土壌動物群集を変化させ、さらに深層のミミズ個体数を減少させる可能性があり、これらの影響には時間的遅れが存在することが示唆された。本調査結果は、シカ高密度化が地下生態系機能に及ぼす長期的影響を理解する上で重要な知見である。