| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-044  (Poster presentation)

環境変化が二枚貝共在菌の担う硫黄循環を変える〜個体内変化が外環境に及ぼす影響〜【A】
Environmental changes alter sulfur cycle dynamics mediated by microbes inhabiting bivalves ~Emission of hydrogen sulfide produced inside a bivalve~【A】

*中川潤紀(佐賀大院・農), 猪股寛大(佐賀大院・農), 折田亮(佐賀大・農)
*Hiroki NAKAGAWA(Grad. stu. Agr. Saga Univ.), Hiroto INOMATA(Grad. stu. Agr. Saga Univ.), Ryo ORITA(Fac. Agr. Saga Univ.)

 海洋生態系において、溶存酸素濃度が低下する貧酸素化が生じると、水中に豊富に存在する硫酸塩が硫酸還元菌により還元されH₂Sが発生する。底泥中で発生したH₂Sは底生生物の生理障害となり、死滅させる原因として考えられる。沿岸域の底泥に生息する二枚貝内部には、多様な共在菌が存在し、その菌叢は宿主間で異なることが報告されている。二枚貝が環境変化に晒されると、内在する菌叢も環境中と同様に変化することが予想される。そこで本研究では、二枚貝が貧酸素化および低塩分化という環境変化に晒された際の培養水中のH₂S濃度の変化を調査するため、室内培養実験を実施した。あわせて、内在菌叢の変化およびそれに伴う機能遺伝子構成の変動を解析するため、二枚貝鰓組織由来のDNAを用いたアンプリコン解析を行った。本研究を通して、環境変化に晒された二枚貝の内在菌叢の変化およびそれらを介した硫黄循環の変化を明らかにする。
 有明海産二枚貝3種を3日間培養した結果、培養水中のH₂Sは貧酸素区で最も高く、低塩分かつ貧酸素区で低く、低塩分区や通常区では検出されない傾向が二枚貝3種に共通して見られた。貧酸素区におけるH₂S濃度は、アサリで最も高く、次いでサルボウガイ、ハイガイの順であった。二枚貝の内在菌叢は宿主種間、実験区間で有意に異なっていた。硫黄循環に関わる機能遺伝子に着目すると、アサリでは貧酸素区においてH₂S生成に関与する硫酸還元遺伝子(dsr)が比較的高く検出され、サルボウガイでは全実験区においてH₂S消費に関与する硫化物酸化遺伝子(sqr)が高く検出された。ハイガイでは両遺伝子ともに低かった。本研究より、二枚貝が環境変化に晒されると二枚貝内部でも硫酸還元が生じることでH₂Sが発生することが明らかになった。また、その発生量は、低塩分条件が加わると宿主種に関わらず減少し、宿主種間では内在菌叢および機能遺伝子の構成比で変化することが考えられた。


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