| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-049  (Poster presentation)

野外に逃げ出した養殖コオロギと在来コオロギとの種間競争の結末
The outcome of interspecific competition between escaped farmed crickets and native crickets

*栗和田隆(鹿児島大学)
*Takashi KURIWADA(Kagoshima University)

外来種の定着要因に関する研究は多い。その多くは、野外環境由来の外来種が対象である。こうした外来種が定着できるのは、天敵から開放される、競争相手が少ない、在来の餌生物が対応できない捕食行動を取れるといったように、在来種との生物間相互作用で有利なためであることが多い。しかし食用や愛玩用など様々な用途のために人為環境で長期累代飼育されてきた生物が、施設から逸出して外来種となることもある。これらの生物は野外とは全く違う環境に適応している点で従来の外来種とは履歴が大きく異なる。飼育環境は捕食者が存在せず、人工飼料が与えられ、餌生物の防御を打ち破るといった機会も少ない。一方で、極端な高密度で飼育されるため、餌や配偶者を巡る種内での競争が激しい。すなわち種内関係にのみ強く選択が働く環境といえる。このような環境に適応した生物は野外には定着しにくいと考えられる。一方で、強い種内競争下で進化してきたため、ニッチが大きく重なる種との競争については優位になるかもしれない。そこで、ペットや人の食料として大規模に長期累代飼育されてきたフタホシコオロギGryllus bimaculatus(以下、フタホシ)を対象に、在来種であるエンマコオロギTeleogryllus emma(以下、エンマ)との競争実験をおこなった。さらに、飼育環境への適応を調べるために、フタホシの野生系統を採集し、飼育系統との競争能力を比較した。その結果、飼育系統のフタホシの方が野生系統よりも強くエンマに負の影響を与えていた。さらに、野生系統はエンマから負の影響を受けたが、飼育系統はエンマからほとんど負の影響を受けなかった。これらの結果から、フタホシの飼育系統は種内競争の激化に応じた進化が前適応となり、ニッチの大きく重なるエンマとの種間競争に対して優位になったと考えられる。フタホシの定着要因を検証するために、今後は捕食者との関係など他の栄養段階の生物との相互作用も検証する必要がある。


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