| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-057 (Poster presentation)
氾濫原は様々な水分条件や湛水期間を示す湿地環境を有しており,生物多様性の高い景観の一つである.山梨県の甲府盆地では,釜無川や御勅使川,笛吹川といった急流河川の運ぶ土砂堆積によって形成された扇状地が地形の大半を占めている.氾濫原は甲府盆地南西端の一部に限られ,現在では宅地や農地への転換が進んでおり,原生的な氾濫原環境は残されていない.その一方で,治水施設である霞堤の開口部付近には,氾濫原湿地が形成されやすく(以下,霞堤湿地),面積や箇所数は少ないものの,現在の甲府盆地における主要な氾濫原の一つとなっている.そして氾濫原上に造成された水田(水稲栽培田)は甲府盆地における氾濫原の代替地としての機能が期待される.演者らは現在の甲府盆地における氾濫原環境である水田と霞堤湿地において水生動物群集の特徴を比較した.
2024年および2025年の7月にカエル目,トンボ目成虫,水生動物を対象に調査を行った.甲府盆地の水田と霞堤湿地を調査地に設定し,各調査地で畔際および岸際におけるラインセンサスと水中の掬い取りを実施した.
カエル目について,ヒガシニホンアマガエルは多数の水田で繁殖していたが,トノサマガエルは数地点の水田で記録されるに留まった.霞堤湿地では,侵略的外来種のウシガエルが繁殖していた.トンボ目成虫について,水田と霞堤湿地との間に群集の明確な差が見られなかったが,その分類群数は霞堤湿地において多かった.水田では水生コウチュウ目の分類群数が多く,多種の幼虫が採集された.その一方で霞堤湿地では魚類や流水性,池沼性のトンボ目幼虫の分類群数が多かった.水田では一時的水域を選好する分類群によって,霞堤湿地では恒久的水域を選好する分類群によってそれぞれ群集が特徴付けられると考えられた.また魚類の分類群数の違いは,これらの要因に加えて水田と霞堤湿地における河川との水域連続性の違いによってもたらされたと推察された.