| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-058 (Poster presentation)
近年、気候変動や一部の野生動物の増加に伴い、感染症を媒介する南方系のマダニ類の分布拡大が報告されつつある。しかしほとんどの先行研究は、マダニ成虫の確認についてのみであり、生活環の完結を確かめた例は無く、南方系種が北方に定着したのかは不明である。マダニ媒介性感染症リスクの適切な把握のためには、南方系種の機会的な侵入と恒常的な定着を分けて理解する必要がある。そこで本研究では、2021年から2024年にかけて、東北地方に位置する山形県において、野ねずみ類、イノシシ、ツキノワグマに寄生しているマダニ類を採集し、種及び成長段階を記録した。また、吸血した成虫メスを飼育し産卵させ、卵の孵化及び正常な幼虫の発生について検証した。その結果、南方系種として知られているDermacentor bellulus の幼虫と若虫がアカネズミから、成虫の雌雄がイノシシとツキノワグマから確認された。また、イノシシから吸血した成虫雌を飼育したところ、1個体が5566の卵を産卵し、その内2552から幼虫が発生した。63個体に形態学的異常が確認されたが、その他の個体は正常な形態であった。以上の結果から、D.bellulusはアカネズミを未成熟期の宿主、イノシシを繁殖宿主として利用して生活環を完結させ、少なくとも北日本の一部に既に定着している事が強く示唆された。今後は、調査対象種及びサンプル数を充実させ、より詳細な宿主-寄生関係を明らかにする必要があると考えられる。