| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-060  (Poster presentation)

植物オルガネラゲノムのサイズと遺伝子セットの多様性:新規解読ゲノムを含む比較解析
Variation in sizes and gene contents of plant organelle genomes: a comparative analysis including newly sequenced genomes

*青柳優太, 佐藤光彦, 飯村秀明, 白澤健太(かずさDNA研)
*Yuta AOYAGI, Mitsuhiko P. SATO, Hideaki IIMURA, Kenta SHIRASAWA(Kazusa DNA Res. Inst.)

植物のオルガネラ(葉緑体・ミトコンドリア)ゲノムは、光合成やエネルギー生産、細胞質雄性不稔など、生存や繁殖に関わる遺伝子をコードしている。オルガネラゲノムのサイズや遺伝子セットの変動は植物の生態や進化とどのような関わりがあるのだろうか。本研究は、「ゲノムが未解読な被子植物17種のオルガネラゲノム解読」と「公共データベースを用いた解析」により、植物オルガネラゲノムのサイズや遺伝子セットの多様性と進化パターンの解明に取り組んだ。
 被子植物17種について、PacBio HiFiデータを用いてオルガネラゲノムをアセンブリし、既知のオルガネラ遺伝子配列のアライメントに基づく遺伝子アノテーションを行った。次に、NCBI RefSeqデータベースから被子植物の葉緑体ゲノム (13,739アクセッション)、ミトコンドリアゲノム (463アクセッション)の系統情報、ゲノムサイズ、遺伝子の種類・数の情報を収集した。新規解読ゲノムと合わせ、オルガネラゲノムのサイズと各遺伝子の数の分布を調べた。
 大部分の種で葉緑体ゲノムは150-160 kbpであったが、菌従属栄養・寄生植物における大規模なゲノム縮小、特定の系統における小規模なゲノムの縮小や拡大がみられた。葉緑体ゲノムが小さい種では、光化学系の電子伝達に関わるndh遺伝子の欠失やタンパク質合成に関わるrpsrpl遺伝子のコピー数の減少の傾向がみられた。一方、葉緑体ゲノムが大きい種ではndhrpsrpl遺伝子のコピー数の増加の傾向がみられた。また、ミトコンドリアゲノムサイズは156 k-10.4 Mbpと多様であった。ミトコンドリアゲノムが小さい種ではrps, rpl遺伝子が欠失している傾向があったが、大きい種では系統特異的に電子伝達やATP合成に関わるnadatp遺伝子のコピー数増加がみられた。rpsndh遺伝子数の変動は、オルガネラの遺伝子発現制御や光合成、ストレス応答に関わっている可能性がある。


日本生態学会