| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-065 (Poster presentation)
ミツバチにとって,冬季は寒冷ストレスや採取資源の制限に加え,ワーカー生産を停止した状態で翌春までコロニーを維持しなければならない過酷な季節である.アジア広域に生息するトウヨウミツバチ(Apis cerana)は,世界的に分布するセイヨウミツバチ(A. mellifera)に比べ高い耐寒性を有するとされる.その根底にあるメカニズムは未解明の点が多いが,近年,腸内細菌が耐寒性や越冬成功に関与することが示唆されている.発表者はこの点に着目し,これまで日本原産のニホンミツバチ(A. cerana japonica)の越冬期の腸内細菌叢の特徴を明らかにした.その結果,越冬期には3細菌属が有意に増加していた.また,分離培養の結果, Lactobacillus panisapium(以降,Lp)が高頻度で分離されたため,これがニホンミツバチの越冬成功に重要な腸内細菌であると考えた.そこで本研究では,Lpの宿主の免疫機能および腸内有機酸産生に及ぼす影響を検証した.実験室内で羽化させたニホンミツバチの成虫計100個体に,通常の腸内細菌叢を形成させた後,その50匹ずつをLp非給餌区(conventional microbiota: CV)と,給餌区(CV+Lp)にランダムに分け14日間飼育した.その後,①抗菌ペプチド産生経路の遺伝子発現量と②腸内有機酸量の相対定量に関して,それぞれ区間で比較した.その結果,CV+Lp群において,Toll経路の認識受容体PGRPおよび調節,転写因子であるCactusとDrosalに加え,抗菌ペプチドの一種Apidaecinらの発現量が有意に向上しており,Lpの免疫賦活化能が示唆された.有機酸に関しては,CV+Lp群で酢酸とコハク酸の相対濃度が有意に高くなっていた.ミツバチにおいて,これらの有機酸は酸化的リン酸化や腸管糖新生活性との関与が示唆されている.以上,越冬期のニホンミツバチ腸内におけるLpの増加は,腸管を介した宿主の免疫賦活化と熱産生のためのエネルギー代謝の恒常性維持に寄与していることが示唆された.