| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-067 (Poster presentation)
北上山地の中央に位置する薬師岳では、標高傾度に沿って落葉広葉樹林(ブナ林)から亜高山帯針葉樹林(オオシラビソ林)、高山低木群落が分布する。本研究ではブナ林からオオシラビソ林への移行プロセスを検討するため、標高による林分構造と更新状況の変化を明らかにした。調査は標高1200~1450mにかけて20m×20mの調査区を4つ設置し、胸高直径1cm以上の樹木を対象に毎木調査を行った。また、各調査区内に2m×2mの実生調査区を4つずつ設置し、高木性樹木を対象に実生稚樹の出現数と樹高を記録した。標高1200mでのブナの優占度(RBA)は78%だったが、標高の上昇とともに幹数密度と個体サイズは減少し、標高1400mでは生育しなかった。オオシラビソは標高1300mから出現しはじめ、標高1300、1350mでは高木層にブナ、低木~亜高木層にオオシラビソが生育する林分となり、標高1400mではオオシラビソが優占する林分となった。各標高の林床ではササが優占するものの比較的多くの実生稚樹が確認でき、標高1200mではカエデ属やブナ等の広葉樹が、中間標高ではダケカンバ等の広葉樹に加えてオオシラビソの実生稚樹が生育していた。標高1400mではオオシラビソのみが出現した。以上より、ブナ林からオオシラビソ林への移行は、標高の上昇に伴いブナの生育が抑制され、それによって空いたニッチをオオシラビソが埋めることで起こると推測された。移行域である標高1300~1350m では林床に針広両種の実生稚樹が生育し、両種ともに更新可能な状態であった。この移行域では、過去50年間に攪乱を介して針葉樹から広葉樹林あるいはその逆の植生変化がみられており、攪乱後の植生は攪乱当時の林床における実生稚樹の生育状況が影響したと考えられる。こうした移行域での更新個体の挙動が今後の気温変動による山地植生の移動に重要となると考えられた。