| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-069 (Poster presentation)
熱帯泥炭湿地林に見られる植生の連続的変化は、従来、泥炭深度の増加に伴う土壌栄養塩の枯渇といった環境要因によって理解されてきた。しかし、ボルネオ島サバンガウ川流域における系統的多様性解析から、植物種間競争などの生物学的プロセスも群集形成に関与する可能性が示唆されている。一方で、複数の泥炭ドームを横断した広域比較は十分に行われていない。本研究では、ボルネオ島北部(マレーシア・ブルネイ)、南部(インドネシア)、およびスマトラ島東部の泥炭湿地林を対象に、沿岸部からドーム中心部に至る勾配に沿って植物群集の系統学的多様性を解析した。指標としてNet Relatedness Index(NRI)を用い、さらに系統情報を考慮しない種組成のみの場合と、考慮した場合の双方でクラスター分析を行い、群集間の類似性を比較した。
その結果、ほぼ全てのドームで泥炭深度の増加に伴いNRIが上昇し、中心部ほど系統学的多様性が低下する傾向が確認された。種組成のみの解析では群集は地理的近接性に基づきグループ化されたのに対し、系統的多様性を考慮した解析では、ドーム上の位置(周辺部か中心部か)に加え、ドーム間の地理的近接性も群集のグループ化に寄与していた。すなわち、広域的な種構成は分散制限などの地理的要因に関連しており、共存可能な系統構造は泥炭深度に関連する環境条件と地理的要因の双方に対応していた。一方、ドーム内のローカルレベルに着目すると、周辺部では競争などの生物的要因、中心部では貧栄養などの環境的フィルタリングが群集構造を方向づける要因として機能しており、これらの相互作用がドーム内レベルでの種構成パターンを生み出している可能性が示された。