| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-071  (Poster presentation)

冷温帯二次林に設置した小規模防鹿柵内の樹木実生の多様性
Seedling diversity within small deer exclosures in a cool-temperate secondary forest

*山﨑理正(京大院・農)
*Michimasa YAMASAKI(Kyoto Univ.)

日本各地でシカの過採食による森林下層植生の衰退が問題となっている。京都府北東部の八丁平湿原とその周辺の二次林では、1990年代後半からシカの食害が目立ち始めた。加えて2000年代前半のササの一斉開花とその後の消失により、下層植生は激減した。このような状況を受けて、2010年より、八丁平湿原とその周辺林で防鹿柵の設置が始まった。1980年より3年おきに実施している毎木調査のプロットを囲うように、2013年と2014年に設置された20~30m四方の柵について、2025年10月から11月にかけて柵内で水平距離1m四方の調査区を3~4m間隔で16個設定した。どちらのプロットも歩道沿いに設置されており、調査区は歩道から斜面を上がる縦方向に4個、歩道と平行の横方向に4個となるようにした。調査区内で更新している木本種とササの実生と稚樹を記録し、地際直径と樹高を測定した。各調査区の種構成の類似度合をNMDSで可視化し、設置している柵よりも小規模な柵でも多種の回復は見込めるか、その場合どのように囲めば効果的かを検討した。
2013年柵設置区では29種が出現した。斜面上部でチシマザサが多く更新し、次いで個体数が多かったミズナラ・アカシデ・リョウブは柵設置前の毎木調査時に優占していた樹種だった。2014年柵設置区では23種が出現し、個体数が多かったリョウブ・アオハダは柵設置前の毎木調査時に優占していた樹種だった。柵内を歩道側から見て縦方向に区切った方が、横方向に区切るよりも林床の光環境が多様になり、出現する実生稚樹の種数が多くなり種構成が多様になると仮説を立て調査したが、結果は異なっていた。縦方向に区切った方が横方向に区切るよりも出現種数が多くなることもなく、縦方向に区切った方が横方向に区切るよりも区画間で種構成が似ているということもなかった。20~30m 四方の小規模な防鹿柵の場合、これ以上小さくすると縦に区切っても横に区切っても更新する種数の減少は避けられず、多様性も低下することが示唆された。


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