| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-072 (Poster presentation)
北上山地の薬師岳において、植生変化を明らかにすることを目的とし、三年代(1977年、2016年の空中写真、および2024年にUAVで取得したオルソモザイク画像)の写真判読を行い相観植生図を作成した。さらに、地形と植生の関係について明らかにするため、国土交通省の10mDEMを用いた地形解析を行った。
本調査地では、低標高域から高標高域にかけて、ブナが優占する落葉広葉樹林(以下、広葉樹林とする)、オオシラビソが優占する常緑針葉樹(以下、針葉樹林とする)、ハイマツ林が分布している。植生帯ごとに分布標高域をみると、ハイマツ林の下限は徐々に上昇しており、植生図でも顕著に変化していた。一方で、針葉樹林と広葉樹林は、分布標高域に大きな変化はなかった。
地形要因と植生分布との関係を見ると、ハイマツ林、広葉樹林、針葉樹林の順に急かつ起伏の大きい斜面に分布する傾向が見られた。斜面方位は広葉樹林が南東を中心とする東から西斜面に、針葉樹林は北から北東斜面と南斜面に多く分布する傾向が見られた。
三年代ともに広葉樹林もしくは針葉樹林だったメッシュの標高は1400m付近を境として、低標高域は広葉樹林、高標高域は針葉樹林であった。地形要因は現在の分布と同じ傾向であった。
広葉樹林から針葉樹林に変化したメッシュは、高標高域の北西斜面で起伏が大きく、広葉樹林から疎林や針葉樹との混交林を経て再び広葉樹林に変化したメッシュは、低標高域の南東から南斜面で起伏が小さな傾向があった。遷移や更新の過程でササの混交が見られたメッシュは、斜面方位が南東であった。山頂から東に延びる尾根沿いの針葉樹林のまとまった攪乱地は、起伏が大きい立地では針葉樹林が回復しているメッシュもあるが、回復していないメッシュは起伏が小さい傾向にあった。
このように、地形と現在の植生の対応関係が見られたほか、過去47年間で植生変化が見られた立地も、地形が植生の挙動に影響をあたえていることが示唆された。