| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-074  (Poster presentation)

生育基盤保全区と盛土区におけるクロマツの樹冠NDVIと樹高成長の関係
Relationship between the crown NDVI and height growth of Pinus thunbergii in the preserved and embankment areas

大垣岳人(東京情報大学), *富田瑞樹(東京情報大学), 菅野洋(日本工営(株)), 平吹喜彦(東北学院大学)
Yamato OGAKI(Tokyo Univ. of Info. Sci.), *Mizuki TOMITA(Tokyo Univ. of Info. Sci.), Hiroshi KANNO(Nippon Koei Co., Ltd.), Yoshihiko HIRABUKI(Tohoku Gakuin Univ.)

 2011年の津波で攪乱された仙台市沿岸部の砂丘域には、生物多様性保全のために砂質基盤を保残した生育基盤保全区と、海岸防災林復旧のために粘土成分を含む丘陵地土砂を重機で締め固めた盛土区がある。盛土区では締め固めによる硬質土壌層が植栽クロマツの根の成長を阻害し、一部で冠水が観察されている。多くの樹木種では、過湿・滞水土壌において根系が成長不全になると、地上部の水ストレスによる樹高成長の抑制や、光合成能力・葉のサイズ低下が生じることが知られている。また、隣接個体との競争は樹高成長に影響する。本発表では、生育基盤保全区と盛土区におけるクロマツの樹高成長と植生指数との関係を報告する。
 2022年12月、2024年2月、2025年4月に、仙台市宮城野区の調査地においてクロマツの樹高・当年主幹長を測定し、相対樹高成長速度(RHGR)を求めた。2022年に、UAVで地上高度30 mからマルチスペクトル画像を撮影し、クロマツの樹冠ごとにNDVIの中央値を求めた。また、調査地の土壌深度10~20cmにおける体積含水率を測定した。
 盛土区は体積含水率が顕著に高く、樹冠NDVIが低い個体が多かった。区画によってRHGRが異なり、RHGRの低い個体が多い区画では樹冠NDVIとRHGRに正の相関関係がみられた。生育基盤保全区は総じて樹冠NDVIが高く、樹冠面積とRHGRに負の相関関係がみられた。生育基盤保全区では樹高の最大・最小値が3年間で増加したが、盛土区では最大値は増加したものの最小値はほぼ変化せず、個体間差が拡大した。
 盛土区では土壌の透水性が低く、一部の区画において透水性の低さがクロマツの葉の活性度と樹高成長に負の影響を与えたと考えられ、その影響が継続していると推察された。一方、生育基盤保全区のクロマツは順調に成長しながらも、樹冠の拡大に伴う個体間競争が生じていると考えられた。


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