| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-078 (Poster presentation)
種内で散布能力の異なる果実をつけることは、変動しやすい環境への適応だと考えられている。海岸植物のクサトベラは、果皮に果肉層とコルク層をもつ型(以下、コルク型)と、果肉層のみをもつ型(以下、果肉型)の果実二型の個体間変異が存在する。コルク型は動物被食散布と海流散布、果肉型は動物被食散布の種子散布様式をもつ。この二型は集団内で同所的に生育するが、砂浜ではコルク型、海崖では果肉型の出現頻度が高い。このように二型の出現頻度が環境によって異なる理由として、二型間の種子散布能力に違いがあることを、我々のこれまでの研究で考察したが、それ以外にも、二型間の発芽特性の違いが関係している可能性がある。一般的に種子の発芽能力は、種子の経過年数、種子や果実のサイズに影響を受ける。そこで本研究では、クサトベラ種子の発芽率と発芽日数について、経過年数(当年性と1年生)および果実サイズとの関係を、二型間と環境間(砂浜と海崖)で比較した。
その結果、当年生と1年生の最終発芽率は、海崖・果肉型でのみ有意な違いが見られ、1年生で低くなった。最終的に発芽した種子の果実サイズは、海崖・コルク型でのみ、未発芽の種子よりも有意に大きかった。果実サイズと発芽日数の関係は、砂浜と海崖のコルク型では有意な負の相関がみられたが、海崖・果肉型では見られなかった。コルク型は砂浜で、海崖よりも果実サイズが大きい傾向にあった。以上のことから、各果実型は、それぞれの出現頻度の高い環境で種子の発芽特性に有利な特徴を持っていると考えられた。例えば、砂浜・コルク型で果実サイズが大きく、種子の寿命が長く、発芽の早い傾向は、海崖よりも攪乱されやすい砂浜での生育や、海流によって種子が長期間運ばれる際に有利かもしれない。果肉型の寿命が短いことは、安定した環境である海崖ではデメリットにはならないのかもしれない。