| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-080  (Poster presentation)

スギの有性繁殖由来の実生とクローン由来の苗木の長所と短所は環境によって異なる
Advantages and disadvantages of Japanese cedar seedlings and clonally-propagated plants vary with environments

*松下通也(森林総合研究所)
*Michinari MATSUSHITA(FFPRI FTBC)

 樹木は、有性繁殖による実生による更新と、クローン繁殖による更新とが可能である。実生由来とクローン繁殖由来の苗木の成長や生存における特性を把握することは、植物個体群動態におけるそれらの適応的意義の理解や、林業などの森林管理の観点で重要である。しかし、それらの差異の一般性に関する情報は未だ限られており、気温、降水量、降雪量などの環境変動に応じて、それらのパフォーマンスが異なる変化を示すかどうかは依然として不明である。本研究では、様々な環境条件を示す29か所のスギの植栽試験地において、成長、生存、樹幹形について、クローン増殖由来の挿し木と、有性繫殖由来の実生とで比較した。有性繁殖由来の個体は、生存率や、樹高・幹直径といった個体成長において挿し木由来の個体を大幅に上回ったが、挿し木は実生より良好な幹形を示し幹の通直性が高かった。植栽地の平均樹高と幹直径は、平均気温の高い温暖な環境で高かったが、積雪の深い地域では平均生存率が低かった。若いスギ個体では、それら生育条件の良い場所では実生が挿し木よりも高い樹高成長を示し、これは植栽地の平均気温と正の相関関係にあった。積雪量の多い地点では実生由来の個体の生存率が挿し木由来の個体より高かった。これらの知見は、将来の気候変動においてクローン由来と実生由来の個体の成長や生存における長所と短所を理解するのに役立つだろう。


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