| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-083 (Poster presentation)
外来植物は侵入地で天敵から解放されることで抵抗性を低下させ,競争能力への資源配分を高める。一方,侵入後に新たな植食者が定着すると,再び抵抗性を進化させる可能性がある。この抵抗性の向上は,植食者に誘導される表現型可塑性と,食害という淘汰圧を介した迅速な進化の双方によって生じると考えられる。本研究では,日米由来のセイタカアワダチソウ計12遺伝子型を用い,侵入地で外来植物が外来昆虫に対する抵抗性を変化させる過程を実験的に再現した。本種は約100年前に北米から日本へ侵入し,現在は全国に分布する外来植物である。1980年代と2000年代に北米原産のアブラムシとグンバイムシが侵入し,日本個体群が短期間で抵抗性を高めた可能性が示唆されている。各遺伝子型を「食害あり/なし」の条件下で2020~2025年に栽培し,遺伝子発現と植物形質を解析した。さらに,各処理区で抵抗性の高い個体を交配する有性生殖区を設け,人為選抜により迅速な進化の伝搬過程を再現した。
2022年のRNA-seq解析では,アブラムシ食害後(7月)に主として熱ストレス関連遺伝子の発現誘導が認められ,防御関連遺伝子の発現誘導は限定的であった。一方,グンバイムシ食害後(9月)には防御応答に関わる遺伝子群の発現上昇が確認された。ただし,同時期の食害区と対照区の比較では発現変動遺伝子数は少なく,遺伝子発現に対する季節変動の影響が大きいことが示唆された。成長形質では,2020~2021年に両昆虫の食害区で明確な成長抑制が見られたが,2022年以降は差が縮小した。これは長期接触による耐性獲得の可能性を示唆する。また,多くの年で無性生殖系統が有性生殖系統より高い耐性傾向を示し,エピジェネティックな記憶効果の関与が示唆される。今後は2025年度のRNA-seqデータを2022年度と比較し,長期接触に伴う遺伝子発現応答の時間的変化を検証する。