| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-087 (Poster presentation)
2011年以降実施してきた著者らの継続的な研究により、ニホンミツバチ Apis cerana japonica は天敵オオスズメバチ Vespa mandarinia に対してのみ巣門周囲へ多様な生物由来の物質の塗り付け行動を行うことが明らかとなっている。本研究では、働き蜂による昆虫類の採集・塗り付け行動および塗り付け物質に含まれる昆虫類の多様性を明らかにするため、塗り付け物質の顕微鏡観察およびDNA解析、働き蜂の行動調査を実施した。
2015年秋に計5群から採取した塗り付け物質を顕微鏡で観察した結果、ガ類の幼虫やアブラムシ類など複数種の昆虫が含まれることが確認された。これらの昆虫は齧られた痕跡がある個体も多く、働き蜂が昆虫類を巣へ持ち帰り塗り付けている可能性が示された。そこで2017年と2021年に、オオスズメバチ襲撃後に帰巣する働き蜂を捕獲・冷却後、顕微鏡による観察と写真記録を行った。また、働き蜂の塗り付け行動を調査するとともにビデオカメラによる撮影を行った。その結果、ガ類の幼虫を大顎に咥えて帰巣した働き蜂が捕獲された。さらに、双翅目の幼虫や蛹が巣門周囲に塗布されたことが確認された。これらの昆虫個体は新鮮な状態であり、傷口から体液や内容物が滲出している個体も確認され、直前まで生きていたと考えられた。ニホンミツバチの働き蜂が野外で昆虫類を採集し大顎に咥えて巣に持ち帰り塗り付ける行動は、著者らが知る限り本研究が初の報告となる。
また、2021年秋には営巣場所周囲の環境条件の異なる3地点計6群から採取した新鮮な塗り付け物質を用いて、DNAメタバーコーディング解析を実施した。その結果、25科31属の昆虫類が検出され、ショウジョウバエ科、チョウバエ科、アブラムシ科などは多くの群れから共通して検出された。
本研究から、ニホンミツバチが野外で昆虫類を採集し塗り付けに利用する行動を示すことが明らかとなった。また、DNA解析からも塗り付け物質に多様な昆虫類が含まれることが示された。