| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-089  (Poster presentation)

琵琶湖の砂浜に生息する地表徘徊性昆虫の分散様式–水流分散を示す数々の証拠-
Dispersal of darkling beetles on sandy beaches of Lake Biwa: pieces of evidence for water current dispersal

*大槻達郎(滋賀県立琵琶湖博物館), 武田滋(AWF滋賀むしの会)
*Tatsuo OHTSUKI(Lake Biwa Museum), Shigeru TAKEDA(Animal Weakling Fun Club)

生物間相互作用は生物多様性を維持・創出する原動力であり、群集の成立過程に影響する。海岸等の攪乱頻度の高い環境で群集を維持するには、昆虫-植物間の相互作用が重要な役割を果たすが、生物の分散過程に関する知見は少なく、更なる研究が必要である。
淡水湖の琵琶湖岸には複数の海浜植物が陸封されている。湖岸に生育する海浜植物は、スナゴミムシダマシの仲間(スナゴミ)に種皮を摂食されることで、発芽が促進される。琵琶湖の砂浜に優占するのは、主にヒメカクスナゴミムシダマシ(ヒメカクスナ)で、海浜ではオオスナゴミムシダマシ(オオスナ)である。スナゴミの生息する砂浜は点在しており、砂浜間は人工物で遮断されていることから、スナゴミは水流分散していると予想される。先行研究では、オオスナが長期間浮遊することは確認されているものの、実態の把握までは至っていない。
本研究では、スナゴミの遺伝的地理構造から分散様式を推定するとともに、飼育実験によりスナゴミにおける水流分散の可能性を検証することを目的とした。系統地理解析の結果から、太平洋と日本海の間には地理構造が見られなかったため、オオスナは水流散布の可能性は高いと考えられた。一方、変異のないデータだけでは、散布の方向性や遺伝的集団動態について不明であるため、今後更なる解析が必要である。ヒネカクスナでは、様々な多型が見られた。今後はサンプルを増やし、集団間で統計的に集団分化が見られるか検証する必要がある。流木・水草飼育実験の結果から、スナゴミはそれらの上で1か月程度は生存することを確認した。長期間生存した個体は、開花した水草の花や流木に生える菌類を摂食していた。琵琶湖の砂浜には流木が落ちていることが多く、森林性の昆虫が砂浜で発見されることもある。それらを考慮すると、スナゴミは流木や水草に乗り、それらを餌として利用することで琵琶湖を漂流していると考えられた。


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