| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-090  (Poster presentation)

クモの円網に見られる不規則部分と造網行動
Anomalies in spider's orb-web and its building behaviour

*中田兼介(京都女子大学)
*Kensuke NAKATA(Kyoto Women's University)

円網はクモがエサを捕獲するためのトラップで、中心から放射状に伸びる縦糸が、らせん状に張られた粘着性の横糸を支えている。これらは概ね規則的に配置されており、その規則性がどのように実現されているかはこれまで多くの研究者の興味を引いてきた。一方、糸の配置を細かく見ると、網あたりに多ければ数十ヶ所ほどの不規則な部分が見られる、これらは網のエサ捕獲性能に影響する可能性がある。にも関わらず、その発生理由に着目した研究は少ない。本研究では、網の粘着性と関わる横糸の不規則部分について、1)造網を急いだことから生じた(速さと正確性のトレードオフから)、2)横糸建築の行動アルゴリズムが破綻したことから生じた(隣接する縦糸と足場糸および外側に既に張られた横糸で囲まれた空間が造網の進行につれて次第に狭まることから)、という2つの仮説を、造網行動動画の微細解析によって検討した。仮説1)からは不規則部分で造網時間が短くなること、2)からは逆に長くなることが予想される。不規則部分を、タイプ1:隣接セクター間で横糸がずれて配置されているもの、タイプ2:横糸が特定のセクターで欠けているもの、タイプ3:隣接した複数の横糸が融合して一つになっているもの、の3つに分けて解析したところ、タイプ3では造網時間が長くなることが示され、仮説1)は当たらないことが示唆された。また、もう一つの横糸の不規則性である、横糸らせんの巻き方向の逆転については、その造網時間は短いことが明らかになった。先行研究により、網の上下非対称性が強い網は造網により長い時間がかかることが示されており、巻き方向の逆転は上下非対称性を強める要素である。しかし、本研究の結果は、上下非対称な網が造網により長い時間がかかることに、横糸らせんの巻き方向の逆転は寄与していないことを示している。


日本生態学会