| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-091 (Poster presentation)
体色を変化させる能力は様々な動物種でみられる。トカゲ類の中でもグリーンアノール(Anolis carolinensis)は体色を緑色から茶褐色へと瞬時に変化させ、その機能は体温調節や背景色との同化ではなく、社会的な序列関係の誇示にあると解釈されてきた。しかし、種内コミュニケーションの文脈は多岐に渡り、信号要素としての体色の機能には探求の余地が残る。
本研究では、繁殖シグナルとしての体色の効果を検証するため、自然状態の観察と模倣ロボットを用いた介入実験をおこなった。本種の繁殖期に単独状態の縄張り雄の体色とディスプレイを披露する頻度を調べたが、これらの形質間に関連性は見られなかった。ロボット提示実験ではオス型とメス型の模倣モデルを開発し、ディスプレイ動作(動的・静的)とスキンの色(緑・茶)が異なる4種類の条件を設けた。これらのモデルを縄張り雄の目前に提示して反応を観察したところ、ターゲットが動的モデルと対峙した場合には顕著な反応の増加が認められたが、緑色と茶色のモデルと対峙した条件間で有意な反応の違いは検出されなかった。
これらの結果から、縄張り雄による不特定な近隣個体への広告発信、距離のある雄間の情報交換、雌に対する雄の反応において、体色が緑色か茶色かは重要ではないことが示唆される。それでは、グリーンアノールの体色変異は種内コミュニケーションにおける信号要素としてどのような役割を持つのか?再度この問いに立ち返り、蓄積されてきた既存知見を踏まえて改めて議論したい。