| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-094  (Poster presentation)

沖縄沿岸藻場におけるアオウミガメの出生地起源と成長段階にともなう分布変異
Ontogenetic habitat use and natal origin variation of green turtles across Okinawan foraging grounds

*浜端朋子(東北大学), 奥山隼一(水産研究・教育機構), 吉田奈緒(水産研究・教育機構), 小林清重(名古屋港水族館), 塚越佳充(久米島ウミガメ館), 西澤秀明(京都大学), 中川武琉(京都大学), 市川光太郎(京都大学)
*Tomoko HAMABATA(Tohoku Univ.), Junichi OKUYAMA(FRA), Nao YOSHIDA(FRA), Kiyoshige KOBAYASHI(PNPA, Nagoya Port Foundation), Yoshimitsu TSUKAKOSHI(Sea Turtle Museum of Kumejima), Hideaki NISHIZAWA(Kyoto Univ.), Takeru NAKAGAWA(Kyoto Univ.), Kotaro ICHIKAWA(Kyoto Univ.)

日本沿岸の海草藻場は、アオウミガメ(Chelonia mydas)の多様な出生地由来個体が集まる摂餌場であり、本種の個体群連結性や適応する海洋環境を理解する上で重要である。これまでに本種は、日本の採餌海域において出生地構成や体サイズ分布に地域差が存在することが知られているが、出生地と体サイズの対応関係は十分に解明されていない。本研究では、沖縄県の久米島、宮古諸島、八重山諸島の3海域の摂餌個体を対象に、体サイズ分布と出生地構成を明らかにし、採餌域への集合がどのような条件で行われているのかを検証した。
久米島161個体、宮古諸島150個体について、周辺の海草藻場で捕獲したアオウミガメの皮膚組織を解析し、既報の八重山諸島102個体のデータと比較した。各個体の出生起源は、mtDNA制御領域ハプロタイプとMIG-seqにより得たゲノムワイド変異に基づき、出生地既知の個体との系統関係から推定した。成長段階の指標には標準直甲長を用い、出生地域は小笠原諸島、琉球列島、日本以外の北西太平洋低緯度域(東南アジア・ミクロネシア・マーシャル諸島を含む)の3地域に区分した。
その結果、北西太平洋低緯度起源の個体は八重山諸島で最も高頻度であったが、その寄与は黒潮下流方向に単調に減少するわけではなかった。宮古諸島は八重山諸島に地理的に近接するにもかかわらず、低緯度起源個体の割合は久米島と同程度であった。さらに出生地別のサイズ分布から、久米島と宮古諸島では琉球列島産個体が沿岸加入直後の小型幼体に集中する一方、八重山諸島では小型幼体の多くが北西太平洋低緯度起源であった。また、小笠原諸島産個体は3海域すべてで亜成体以降に確認されず、沖縄沿岸から離れる可能性が示唆された。
以上より、採餌場に集まる個体構成は地理的距離や海流のみでは説明できず、出生地と成長段階に応じた生息地選択が複雑に行われていることが示唆された。


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