| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-095 (Poster presentation)
ウメボシイソギンチャク科のイソギンチャクは同種や異種個体に攻撃行動を示すことが知られている。本研究では、ヨロイイソギンチャク属で単独生息するヨロイイソギンチャク(ヨロイ)、集団形成するアオホシイソギンチャク(アオホシ)とヒメイソギンチャク(ヒメ)、他属で集団形成するスズナリイソギンチャク(スズナリ)を対象に、①集団内個体の遺伝的関係、②遺伝的距離と攻撃行動の関係を検証し、属間や生活型による自他認識の違いを明らかにすることを目的とした。
ヨロイは名護市辺野古、アオホシは青森市浅虫、ヒメは苓北町、スズナリは琉球大学瀬底研究施設から採集した。個体間距離を記録し、湿重量測定、養生後に接触実験により攻撃行動を観察した。足盤組織からDNA抽出後MIG-seqによりSNPを取得しクローンおよび血縁関係を推定した。
アオホシとヒメでは同一タイドプールや転石内でクローンが確認された。スズナリでは接触個体間にクローンもみられたが、離れた場所では複数の遺伝子型が確認された。ヨロイではクローンは検出されなかった。ヨロイイソギンチャク属3種では体壁や周辺球を押し付ける攻撃行動がみられたが種間で頻度に違いがあった。攻撃行動と遺伝的距離に有意な関係はみられなかったが、クローン個体間では常に攻撃行動はみられなかった。スズナリでは明確な攻撃はなく退避行動や触手を触れ合わせたまま留まる行動が観察され、クローン間では退避は確認されなかった。
属および種間で攻撃行動に違いがみられた一方、全種でクローン同士では攻撃や退避行動はみられなかった。完全固着性でないイソギンチャク類では他者認識時に低コストの退避や接触回避を選択している可能性がある。今後、生活史や繁殖様式、生息地の限定度を明らかにした上で自他認識における攻撃行動の位置づけを捉え直す必要がある。また血縁度と独立した化学物質が個体認識に関わるかを検証する必要もある。