| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-096 (Poster presentation)
急速に進行する都市化は、生物の生息環境を大きく改変し、種間関係や資源利用様式に新たな再編をもたらしている。都市に広く分布するハシブトガラスとハシボソガラスは、形態的・生態的に近縁でありながら、都市環境における優占傾向が異なることが指摘されてきた。しかし、都市規模の違いに着目し、広域的に両種の生息地利用を比較した研究は限られている。本研究では2024年4月から2026年1月にかけて、東京都や香川県など10都府県の大都市・小都市・郊外地域を対象に、各地点で日没前45分からの1時間に定点観察を行い、両種の出現個体数および出現頻度を記録した。
その結果、大都市はハシブトガラスの出現頻度および個体数が顕著に高く、小都市および郊外ではハシボソガラスが優占するという明瞭な傾向が確認された。すなわち、高層建築物が密集する立体的市街地や工業地域ではハシブトガラスが卓越し、農地、河川敷、開放的緑地を含む景観ではハシボソガラスが多く出現した。これは、人工構造物の配置や餌資源の空間分布、さらには人為的撹乱の程度が、両種の空間利用戦略や行動特性の差異を通じて分布に反映されている可能性を示している。
さらに、本研究は複数地域を横断した比較により、都市化の程度が連続的な環境勾配として両種の分布構造に反映されることを示唆した点に意義がある。都市は単なる生息地改変の場ではなく、近縁種間の競争関係、資源分割、さらには行動的柔軟性の差異を通じて群集構造を再編成する動的な生態学的舞台であると考えられる。今後は都市規模および土地利用構成比を説明変数とした統計解析を行い、分布分化を規定する要因を定量的に検証するとともに、都市鳥類管理や人間—野生動物関係の調整に資する基礎的知見の提示を目指す。