| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-097 (Poster presentation)
人為選択は、経年的に生物の形質を変えうる。また、同じような選択圧が複数の個体群に作用すると、個体群間で類似した形質を示す場合がある。よって、複数の個体群に同じ人為選択が作用した場合、個体群間で類似した形質が見られる可能性があるだろう。
北海道の河川に生息するサクラマスのオスには、一生を川で過ごす「残留型」と、生まれて数年を川で過ごした後、海へ索餌回遊し、1年後に母川回帰する「降海型」に生活史が分岐する生活史二型が見られる。一方、メスには生活史二型が見られず、全ての個体が「降海型」となる。そのため、北海道の川に戻ってきた降海型の性比は、メスに偏る場合が多い(=降海型はメスが多く、オスが少ない)。
北海道の一部の川では、「降海型のみを親魚に用いたふ化放流」が長年行われており、ふ化場では残留型のオスは子孫を残すことができない。そのため、放流魚のオスは、残留型になりづらく、降海型になりやすい。よって、ふ化放流が継続して行われている川では、降海型の性比がメスに偏った状態から1:1に経年的に近づくこと、が予測される。
本研究では、降海型のみを親魚に用いたふ化放流を継続的に行ってきた5河川において、1980年代から2020年代に捕獲された降海型の性比の経年変動を検討した。その結果、4河川で降海型の性比がメスに偏った状態から1:1に近づき、残りの1河川でも性比が1:1付近に維持された。これらの結果は、降海型のみをふ化放流の親魚に用いるという共通の人為選択が長年作用することで、各河川の降海型の性比が1:1付近に収斂したことを示唆する。