| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-104  (Poster presentation)

捕食動物は大量絶滅を生き延びられるか?
Can predatory animals survive a mass extinction?

*吉田勝彦(国立環境研究所)
*Katsuhiko YOSHIDA(Nat. Inst. Environ. Stud.)

 地球の歴史では生物の大量絶滅が複数回起こったことが知られている。その原因には隕石の衝突や大規模な火山活動などが上げられているが、これらの結果として引き起こされる一次生産量の急激な減少が生態系に直接影響を与える要因と考えられている。一次生産量の減少は、食物連鎖で上位に位置する捕食動物に不利に働くが、はたして捕食動物は大量絶滅を生き延びることができるのだろうか?そこで本研究では、生態系進化モデルを用いて、生態系の進化の途中で一次生産量を急激に一定期間減少させるシミュレーションを行った。一次生産量を通常時の10%に減少させると、雑食動物種は約8%生き延びたが、肉食動物種の生存率は1%を下回った。白亜紀末の大量絶滅では、デトリタス食の動物の生存率が高かったので、生態系進化モデルに腐肉食を導入したモデル(動物の遺骸がごく短期間だけ餌資源として利用可能になる)で同様のシミュレーションを行った。このモデルでは一次生産が通常の10%に減少したときに分類群の絶滅率が実際のケースに近くなったが、腐肉食を導入したモデルの方が捕食動物種の生存率が有為に高く、雑食動物種の生存率は約12%、肉食動物種の生存率は3.4%であった。また、生き残った雑食動物種の約75%、肉食動物種の97.5%は腐肉食を併用していた。植物のバイオマスは一次生産が停止すると急激に減少するが、腐肉は一次生産が停止した後も一定期間供給されるので、捕食動物にとって、餌がないときの非常食として機能しており、そのため、腐肉食を併用する捕食動物の生存率が高くなったと考えられる。白亜紀末の大量絶滅の時、生食連鎖に依存している海洋表層生態系では特に絶滅率が高かったが、その一方で腐食連鎖がある小規模陸水域では絶滅率が低かったことが知られている。本研究の結果は、これまで謎とされていた大量絶滅の選択性を説明できる可能性がある。


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