| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-112 (Poster presentation)
ネイチャーポジティブの実現に向けて、都市域に点在する緑の質と量を高めることが求められている。Owen(2010)は、庭に生息する昆虫がイギリス全土の約3分の1に相当する可能性を示しており、個人宅の庭が生物多様性の維持・向上に果たす重要性がうかがえる。しかし、国内の個人宅の庭における生物相を詳細に調査した例は少ない。近年はアプリケーションの発展に伴い、市民参加型の生物調査が広まりつつあり、専門家に限らず多様な人々が様々な場所で調査を行えるようになってきた。しかし、国内における個人住宅の庭を対象とした長期かつ全国規模の生物相調査は実施されていない。そこで本研究では、国内都市域における生物多様性の現状把握を目的として、2010年度から2019年度の10年間および2025年度の「お庭の生きもの調査」の結果を用いて分析を行った。調査対象は国内の個人宅の庭・ベランダ・バルコニー・屋上とし、参加登録を行った市民が自宅にて観察を実施した。2010〜2019年度には47都道府県から1,179世帯が参加し、1,280種の報告が得られた。2025年度は27都府県から67世帯が参加し、230種の報告が得られた。報告種の約8割を昆虫類が占め、とくにアゲハチョウ類(アゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、キアゲハ)、モンシロチョウ、アリ類の報告が多く、2010年度以降10年間でその傾向は大きく変化しなかった。このことから、個人宅の庭を頻繁に利用する昆虫相が明らかとなった。さらに2025年度は、アゲハとキアゲハ、モンシロチョウとスジグロシロチョウといった、同定が難しい種に着目し、WebページやSNSを通じて情報発信を行いながら調査を進めた。その結果、アゲハチョウ類(アゲハ、アオスジアゲハ)やアリ類の報告が多く得られ、過年度と同様の傾向が確認された。本発表では、これら昆虫類のデータを用いて、都市域の生物多様性における個人宅の庭の重要性について考察する。