| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-006  (Poster presentation)

ネパール高山地帯における聞き取り調査を用いた肉食動物による家畜襲撃の発生傾向【S】
Interview-Based Assessment of Livestock Depredation Patterns by Carnivores: A Case Study in the High Mountains of Western Nepal【S】

*Kaho TANAKA(Kyoto Univ.), Gopal KHANAL(DNPWC, CES), Tsewang Ngoedup GURUNG(Dolpo, SLCC), Kodzue KINOSHITA(Kyoto Univ.)

 西ネパール高山地帯のシェイポクスンド国立公園では、保全が急務な肉食動物が家畜を襲撃し、地域住民の生計維持に甚大な影響を与えている。また、地域住民による襲撃動物への報復殺の発生事例もあり、保全対象種の存続が脅かされている。この社会課題に対し、家畜襲撃に対する襲撃被害の経済的評価や社会的対応、および保全対象種を中心とした肉食動物の襲撃特性などの観点から課題解決のための研究が行われてきた。本研究では、家畜襲撃の発生傾向をより詳細に解明するため、各世帯の家畜管理方法に加え、脆弱な家畜の生物学的属性や非保全対象種を含めた肉食動物全般の襲撃事例に着目し、襲撃発生の特性を分析した。
 2025年6月から8月に、同公園内の12世帯(プグモ村2世帯とリグモ村10世帯)を対象に、過去の家畜襲撃の発生事例(2024年1月から2025年7月)を聞き取った。その結果、総家畜所有数471頭のうち、54頭(10/12世帯)が襲撃被害に遭っており、一世帯あたりの家畜所有数が多いほど被害率は高い傾向にあった(Spearman’s ρ= 0.618, p < 0.05)。その一方で、家畜所有数が最多であった世帯に関しては、被害率は最も低く(2.3%)、専業的な生業活動や、家畜小屋への収容、複数世帯との協力した家畜管理体制が被害抑制に関係していたことが示唆された。また、最も脆弱性の高い家畜の属性は、ヤクの仔畜(28/54頭)であり、家畜所有数だけでなく、仔畜の所有割合やその管理体制が襲撃の発生に寄与していると考えられた。推定襲撃動物はユキヒョウ、オオカミ、およびジャッカルであり、特にユキヒョウとオオカミの襲撃はヤクの仔畜に集中していることが明らかとなった。
 以上より、襲撃は特定の属性の家畜を対象に発生する傾向があり、肉食動物種間で襲撃対象に競合が生じていること、また家畜管理方法によっては襲撃を抑制できることが示唆された。


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