| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-008 (Poster presentation)
自然に基づく観光は様々な人為的及び自然的要因により、形作られている。特に、自然公園間の訪問の違いについての研究も自然に基づく観光の研究の1つの分野として重要であり、多く行われている。しかし既存研究の多くは単年度や短期間のデータに基づく分析にとどまり、数十年規模の長期傾向と年次レベルの変動を明確に区別した検討は限られている。単一の公園での時間的変動や短期的な気象条件や経済変動に着目するだけでは、公園利用の構造的変化を十分に理解することはできない可能性がある。
本研究では、環境省が行っている「自然公園等利用者数調」の長期時系列を利用し、訪問者数の長期的傾向と年次変動を分離した上で、30年間の訪問者数の変化と気候・社会経済条件との関係を解析した。
その結果、30年間で25公園において訪問者数は増加傾向、57公園で減少傾向が確認され、日本全体としては減少傾向が示されたが、公園間の変化は一様ではなかった。特にスキー利用のある公園では減少傾向が有意に強く、利用形態の違いが長期動態に影響している可能性が示唆された。一方で、気候条件や社会経済条件の多くは公園間の長期的差異を十分に説明しなかった。公園ごとの立地や利用構造といった、より構造的要因の存在が示唆される。
さらに、年次スケールでの解析では、気温や所得、宿泊者数の年次変動は訪問者数を大きく左右せず、訪問者数には非常に強い自己相関が認められた。これは、気候変動や経済変化の影響が単年度で即時に現れるのではなく、長期的な利用構造を通じて徐々に反映される可能性を示唆する。
本研究は、長期モニタリングデータを活用することで、自然公園利用の理解において短期的変動と長期的構造変化を明確に区別することができた。単年度の気象条件や経済指標のみに基づく評価では、公園利用の将来的変化を十分に予測できない可能性があり、時間スケールを意識した分析枠組みの構築が求められる。