| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-009 (Poster presentation)
生物多様性の損失を食い止めるには幅広い人々の保全への参加が必要である。しかし、生物多様性について「概念の意味や定義を知らない」・「自分の生活とのつながりが分からない」・「メディアの報道量が少なく情報源がない」といった障壁が、人々の間での生物多様性に関する話題の普及や関心の向上を阻んでいる。こうしたギャップに対応するために、人々の現状の「生物多様性の損失」に対する認識を把握し、保全のためのコミュニケーション戦略を特定する必要がある。本研究は、人々に「生物多様性の損失」と聞いて思い浮かべる出来事を自由に記述してもらうタスクを通じて、日本の人々の「生物多様性の損失」に対する捉え方の多様さを特定した。全国の707人を対象にした調査で得られた自由記述回答を、学習済み言語モデルによるベクトル埋め込みと単語出現頻度による特徴語抽出を組み合わせたBERTopic (Grootendorst, 2022) というトピックモデルを使用して解析した。その結果、日本の人々の思い浮かべる「生物多様性の損失」は大きく8つのグループに分かれることが明らかになった。さらにその8つは、1)生きものの減少を体感する等の実体験に基づくグループ、2)そうした実体験を伴わないステレオタイプやメディアに基づくグループ、3)そもそも生物多様性の損失にかかわる出来事がわからなかった・思いつかなかったグループ、の3つに大別できた。1)の実体験を有するグループはわずか20%強であり、多くの日本の人々は「生物多様性の損失」を自分の経験から発見できていないことが明らかになった。さらに、グループによって登場する分類群に偏りがみられることや、報道量は少ないにもかかわらずメディアの影響力が大きいことも明らかになった。