| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-011 (Poster presentation)
二次草原は生物多様性や生態系サービスに関連した高い価値を持つものの、その面積は急速に減少している。草原面積の減少は生物多様性の低下につながり、生態系サービスの提供にも悪影響を及ぼすため、草原の管理保全が急務となっている。2014年と2021年に実施された全国規模のアンケート調査によると、草原の維持管理における担い手不足・高齢化が課題となっており、担い手確保のための取り組みも進んでいないことが示唆された。しかし、その後草原管理を取り巻く外部環境は大きく変動し、2014年から現在に至るまでの維持管理の現状は変化したのか、変化に寄与する要因は何かについては、まだ十分に解明されていない。変化の要因を分析し、そこから実践的な知見を得ることは、今後の効果的な草原管理施策を検討する上で有効である。
本研究では、2014年・2021年に実施したアンケートの送付先の情報にしたがい、独自の質問項目を含む追跡アンケート調査を2024年に行った。同一自治体の経年変化を追跡できるパネルデータを構築し、クロス集計とフィッシャー検定を用いて、①2014年から2024年にかけての草原管理の現状変化と、②変化に寄与する要因の解明を目的とした。
結果、2014年と2024年の回答を比較すると、一部の自治体で維持管理の現状に変化があることが明らかになった。土地所有者が小規模主体から大規模主体へと変化した草原ほど、担い手確保の取り組みが進んでいた。また管理者の主体が多様化している草原や、草原価値を高める取り組みが進んでいる草原ほど、新たな担い手が確保できていた。
以上の結果から、担い手不足という共通課題に対して、土地所有の集約化や管理主体の多様化、草原の価値向上に向けた働きかけが有効な解決策となり得ることを示唆している。今後は、自治体へのインタビュー調査を実施し、量的データでは捉えきれなかった質的な変化や地域固有の要因をさらに詳細に分析していくことが課題である。