| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-013  (Poster presentation)

都市緑地の植物多様性と利用者の主観的豊かさ: 利用者と植生群集の特性の役割【S】
Plant diversity in urban green spaces and perceived plant diversity : roles of plant community and visitors' attributes【S】

*伊藤風音(農工大・院・農), 赤坂宗光(農工大・院・GIR)
*Kazane ITO(TUAT), Munemitsu AKASAKA(TUAT(GIR))

 都市緑地の生物多様性は健康・ウェルビーイングの向上に寄与することが知られている。特に個人の知覚した生物多様性の程度が実際の生物多様性と比較して複数のウェルビーイング指標とより強い相関が見られると報告されている。知覚生物多様性に関する研究では、緑地全体を対象とした知覚生物多様性に着目した研究が多い。また緑地の実際の種数等と知覚生物多様性が関係しない例も報告され、知覚の差は個人の特性に起因するとして、環境要因よりも個人の特性が重視されてきた。そのため知覚生物多様性に関係しうる緑地の特徴に着目し、個人の特性との相対的な重要性を比較した研究は限定されている。また知覚生物多様性の把握には、種数の推定と主観的な多様性の評価という2つの観点が用いられてきたが、両者の自然の捉え方に違いがあるかの検討は少ない。
 本研究では、知覚生物多様性を規定する環境要因と個人要因の役割の理解を目的に、都市緑地の訪問者が知覚する植物の生物多様性に着目した。調査では都市緑地内に調査区画を設定し、植生調査に基づき、多様性、外観形質、系統、植生の立体構造といった複数の指標を算出した。訪問者が知覚する調査区画の植物多様性の程度を(知覚種数・主観的な多様性の程度)として把握し、個人特性(知識・経験・親しみ等)も取得して、統計解析を実施した。
 結果、調査区画の個人が知覚した植物の多様性の変動は両観点とも訪問者の個人特性よりも環境要因で説明された。また主観植物多様性は、相対的に種数より外観形質や系統距離、植生の構造によって説明された。
 以上から知覚生物多様性を左右する要因としては、これまで検討されてきた個人特性よりも、緑地の特徴が相対的に重要であることを示唆する。生物多様性の知覚を介した健康やウェルビーイングへの影響を踏まえた緑地設計のためには、種数だけでなく外観の違いや構造といった環境要因が重要となるかもしれない。


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