| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-016 (Poster presentation)
市民科学による長期モニタリングは欠測や検出の揺らぎを含み、単純な年比較では真の変化と区別しにくい。本研究は、環境省モニタリングサイト1000里地調査の一般サイト「トキのふるさと能登まるやま」における植物相データを用い、植物種の局所的な消失リスクを直接推定するのではなく、重点再調査優先度(Alert)として確率的に診断する枠組みを提示し、保全現場における変化の早期検知と順応的管理に資する指針を示す。
本調査地では4区間(農道脇、林縁脇、畦畔、里山林)に分け、2009–2019年に毎年月次(4–11/12月)で繁殖器官(つぼみ・花・種子・胞子)の確認にもとづき種名を記録した。最終年から6年後の2025年に同一地点・同一方法で再調査した。解析には、誤同定の影響を抑えるため全期間で3回以上検出された419種を対象とし、各種について「繁殖器官を確認した月数」を年カウントとして集計した。さらに年×区間の調査実施月数から努力量(観測機会)を数値化し、調査努力量の変動を補正できる共役ベイズ(ベータ二項)モデルを用いた。具体的には、過去(2009–2019年)に基づき各種の「1観測機会あたり検出確率」の事後分布を推定し、2025年の観測値が事後予測分布の下側に位置する確率(下側確率)を算出して、Alert=1−下側確率とした。さらに2019年(学習期間2009–2018年)でも同様にAlertを算出し2025年と比較した。
その結果、2019年と比較し、2025年では高アラート種が顕著に増加した。現地では2024年以降、震災を契機として水田耕作や草刈り等の管理が停滞したこと、加えて電柵設置がされなくなったことによるイノシシ攪乱の増加等の環境変化が生じた。これらがいくつかの低茎草本の開花・結実確認(本研究での「検出」にあたる)が抑制された原因となった可能性が示唆された。