| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-017 (Poster presentation)
伝統的な農林業活動を中心とする「里山暮らし」の消失に伴い、里山における生物多様性の損失が進行している。里山暮らしの継承や再生が望まれるものの、消失しつつある暮らしの再生は難しい。一方、近年、持続可能なライフスタイルに対する市民の関心が高まりつつある。生物多様性の保全に貢献する里山暮らし(活動)を特定し、その価値を普及できれば、里山暮らしの復権と里山の生物多様性保全を実現できる可能性がある。そこで、本研究では、里山で営まれる農林業活動の生物多様性保全効果について、市民がどの程度気づき、どのように評価しているかを調査した。
調査は、対面式の半構造化インタビューとWebアンケートで行った。インタビューは、2023年8月から2026年1月に、岩手県、福島県、長野県、岐阜県、広島県、佐賀県の中山間地集落への居住経験を持つ61歳から92歳の男女36名を対象に実施した(以下、里山居住者)。Webアンケートは、2024年3月に国内在住の20歳以上の男女を対象に実施し7,795名分の回答を得た(送信数:101,829;有効回収数:7,795)(以下、Web回答者)。
その結果、里山で営まれる農林業活動の生物多様性保全効果は、里山居住者の7割強、Web回答者の2割弱が体験として感じていた。Web回答者を、日常的に農業や林業に従事した経験のある人に限定すると、農業従事者の5割弱、林業従事者の6割はそれを体感していた。同様に、里山で営まれる農林業活動が生物多様性保全に役立つと認識している割合は、里山居住者の7割強、Web回答者の4割であり、Web回答者のうちの農業従事者の6割強、林業従事者の7割であった。また、農林業活動の消失により里山の生態系が劣化することを問題だと考える割合は、Web回答者の6割弱、農業従事者の7割強、林業従事者の8割弱であった。今後は、里山で営まれる農林業活動の生物多様性保全効果に気づくことが、問題意識を高め、保全意図を喚起するかを検証する予定である。