| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-019 (Poster presentation)
2011年の福島第一原発事故後、避難指示に伴う土地利用の急激な変化は鳥類群集に影響を与えた可能性が高い。事故の影響を評価する多くの研究では、避難指示区域とその周辺の対象区域を比較するCI(Control–Intervention)デザインが用いられたが、事故前の差を考慮できず交絡要因を排除できない。これに対して事故前後の変化を指示区と対照区とで評価するBACI(Before–After–Control–Intervention)デザインは事故による影響をより妥当な形で評価できる。避難指示のように予測できなかった介入前のデータは得られないことが多いが、発表者らは福島県在住の野鳥愛好家・戸澤章氏が福島県各地で収集してきた鳥類調査データを利用させて頂くことができた。1999-2001年5-7月に調査された89回のセンサスデータ(避難指示区内37回)を用い、2020年5-7月にほぼ同一の3次メッシュ内で再調査を行い、出現頻度を比較した。その結果、BACIでは避難指示による個体数への影響があったと判断された種が、CIでは検出されない例がみられた。一方で、CIでは影響があると判定されたが、BACIでは確認されない種も存在した。種特性(食性や生活圏、体サイズ)と避難指示による影響の関係をみると、避難指示によって昆虫を採食する種に正負両方の影響がみられた。BACIに基づく結果では、都市部で生活する種に負、草地性の種に正の影響がみられた。また負の影響を受けた種は体サイズが小さい傾向があった。しかし、それらの傾向はCIでは検出できなかった。上記の結果から、CIデザインに基づく原発事故影響評価では、影響を受けた種数や種感受性に影響を与える要因について偏った評価を下してしまう恐れがあり、適切な調査デザインの下での再検討が望ましいことを示した。一方で、予期せぬ介入によりBACIデザインの適用が困難という状況は多い。BACIデザインとの比較によってCIデザイン利用の際の限界や注意すべき点についても考察したい。