| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-026 (Poster presentation)
近年、世界的に外来種の侵入・定着が増加していることから、侵入先の環境における外来種の急速な適応進化が注目されている。特に、原産地で共存していた植食者と宿主植物が侵入地で再会した場合、両者の相互作用は原産地とは異なる進化的過程をたどる可能性があるが、その実証例は限られている。
本研究では、2000年に兵庫県で初めて確認されて以降、同心分布を拡大している北米原産の外来植食者アワダチソウグンバイを対象に、分布の前線(青森県弘前市)と中心部(滋賀県大津市)に由来する個体群間で、寄主植物セイタカアワダチソウへの応答に地域間変異がみられるかを検証した。セイタカアワダチソウは、アワダチソウグンバイの定着年数が長い地域ほど抵抗性が高いことが知られている。両地域由来の個体群について、野外調査、摂食選好性実験、および交差飼育実験を行い、宿主利用に関わる応答の地域間変異を評価した。
野外調査より、アワダチソウグンバイの個体数の季節的推移は調査年や調査地点ごとに異なっており、周辺植生などの微環境や気候条件が発生消長に影響を与えると考えられた。摂食選好性実験では、どちらの地域個体群も抵抗性が低いと考えられる株由来の葉が有意に選好され、その摂食選好性の大きさに明瞭な地域差は認められなかった。交差飼育実験では、弘前由来個体群は滋賀由来のセイタカアワダチソウ上で卵塊数が多かったものの、幼虫個体数は弘前由来のセイタカアワダチソウ上で顕著に増加した。一方で、滋賀由来個体群の幼虫個体数は両地域由来のセイタカアワダチソウ上でほぼ同じであり、弘前個体群がセイタカアワダチソウの抵抗性に対して弱いことが示唆された。
以上より、分布の前線と中心部のアワダチソウグンバイでは摂食選好性に変異はみられない一方、中心部個体群はセイタカアワダチソウの抵抗性への対抗に、分布前線個体群は成長にエネルギーを投資していると考えられた。