| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-027 (Poster presentation)
外来サケ科魚類のブラウントラウト(Salmo trutta)は,国内においてスポーツフィッシングの対象魚として人気を博している。一方で,IUCNが選定した「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されており,交雑,捕食,種間競争による在来サケ科魚類の減少が懸念されている。本研究は,食性分析を通じて,本州に生息するブラウントラウトの生態特性を明らかにすることを目的とした。調査は岐阜県飛騨市河合町を流れる神通川水系宮川の支流である小鳥川において行った。2025年5月から10月にかけて計9 回,釣りによりブラウントラウトを56個体採捕した。また,宮川下流漁業協同組合が2025年10月から12月にかけて実施した駆除において捕獲された240個体の提供を受けた。採捕された個体は氷蔵して持ち帰り,標準体長,尾叉長,全長,体重を測定後,胃を摘出し,性別を確認した。その後,胃から胃内容物を取り出し,各被食分類群について「目レベル」で分類した。胃内容物の総湿重量に占める割合(%WT)および出現頻度(%OC)から摂餌指数(AI:Alimentary Index)を算出した。食性分析の結果,ブラウントラウトは,魚類およびトビケラ類やカワゲラ類などの水生昆虫を主要な餌資源とすることが明らかになった。また,サンプルを体長ごとに分類して分析を行ったところ,体長が大きい個体は魚類を捕食する割合が高い傾向も明らかになった。小鳥川を含む宮川支流には在来・放流サケ科魚類が生息している。これらのサケ科魚類はいずれも水生昆虫を中心とした食性を有することから,ブラウントラウトが在来・放流サケ科魚類に対して,水生昆虫をめぐる餌資源競争を及ぼしている可能性が考えられる。さらに,本研究において大型ブラウントラウトは魚食性の傾向が強いことが示されたことから,在来・放流魚類が高頻度で捕食されている可能性が考えられる。ブラウントラウトは,在来・放流魚類に対して,餌資源競争および直接捕食によって,影響を及ぼしている可能性が示唆される。