| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-029 (Poster presentation)
在来種と近縁な外来種の分布境界となっている地域は、外来種の更なる侵入を食い止め、在来種の保全対策を講じる最前線となる。北海道には現在、在来種のクロテン(Martes zibellina)と国内外来種であるニホンテン(M. melampus)が生息しており、北海道の南西部ではニホンテンが過去80年ほどで分布拡大し、クロテンが姿を消したとみられている。近年の分布境界となっている石狩低地帯では、西縁に位置する野幌丘陵において、両種の分布が約2kmの範囲に迫っていることが報告されている。この地域における両種の生息密度や行動圏の重複の有無など、詳細な生息状況の調査が求められている。
そこで本研究では、テン類の最も見つけやすいフィールドサインである雪上の足跡および糞や尿を野幌丘陵で収集し、 DNA解析による種判別を行った。DNA解析には、先行研究で用いたPCR&サンガー法による配列解読(対象はミトコンドリアDNAのNd2領域)を行う手法に加え、より簡便な種判別ツールとしてLAMP法による手法の開発を試みた。
その結果、2026年1月に野幌丘陵で収集した28サンプル(雪上足跡21、糞3、尿4)でPCR&サンガー法による種判別に成功した。野幌丘陵の中部を境に、北はクロテン、南はニホンテンが検出されたが、中部の1地点では両種ともに検出された。これにより、野幌丘陵の中部では、1~2 kmの狭い範囲で両種の分布が重複していることが判明した。LAMP法については、2種それぞれに特異的なプライマーをNd2領域に設計したところ、糞と尿では30分以内に種特異的な蛍光反応が起こり、種判別に成功した。一方、雪上足跡での反応率は現状では低く、添加剤として塩酸グアニジンを用いるなどの対策を検討している。今後、雪上足跡からのDNA判定を現地で容易に行えるよう改良し、より効率的に生息調査を進めていく方針である。