| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-032 (Poster presentation)
シロザ(Chenopodium album L.)は日本の在来植物であると同時に,南極大陸を除く全ての大陸の広範囲に分布するコスモポリタン雑草でもある。そのため,世界には各地の環境に適応し,遺伝的・生態的に異なるシロザ集団が存在すると考えられる。
日本は20世紀後半から北米や南米,豪州,一部のユーラシアの国々から穀物を大量に輸入し続けているが,輸入穀物には生産国の農耕地に蔓延するシロザの種子が多数混入していることが報告されている。したがって,長い間地理的に隔てられ,日本とは異なる環境に適応した海外のシロザが,近年の穀物貿易という人間活動によって日本に侵入している可能性が考えられる。しかし,種としては同じであるため形態から外来かどうか判別することは難しく,その実態は未解明である。そこで,集団遺伝学的な解析を用いて日本に外来系統のシロザが定着しているかどうか明らかにしようと試みた。また,外来系統については栽培試験を実施し,繁殖特性の観点から国内の集団と異なる特性を有しているかどうか検証した。
集団遺伝解析の結果,穀物輸入港に局所的に定着している一部のシロザ集団が,日本内陸に分布するシロザ集団と遺伝的に大きく分化しており,輸入穀物等に混入したシロザや海外で採取された一部のシロザ個体と遺伝的に近縁であることが示された。したがって,この集団は穀物貿易を介して導入された外来系統であると考えられる。また,栽培試験の結果,日本国内のシロザは短日性を有するが,外来系統は日長に依存せず出芽後速やかに花芽分化をし,種子散布までの期間が非常に短いことが明らかになった。
日本の集団がこれまで獲得してこなかった生態的特性を有する個体が人間活動に伴って海外から導入されることで,交雑による新たな遺伝子型の創出や,新たな生育地への進出を促進する可能性がある。