| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-033 (Poster presentation)
コイ科カマツカ属魚類Pseudogobioは,日本からカマツカ(西日本に自然分布),ナガレカマツカ(西日本の一部に自然分布;以下,ナガレ),スナゴカマツカ(東日本に自然分布;以下,スナゴ)の3種が知られている.カマツカは人為的な移入により東日本で国内外来種として定着しており,スナゴに対する遺伝的攪乱が懸念されている.この2種には分布境界域にて自然交雑集団の存在も示唆されており,またカマツカとナガレにおいても,2種の同所的生息域が知られている.しかし,これらの種の交雑の実態については,これまでmtDNAや少数の核DNA遺伝子座を用いた断片的な解析が行われているのみである.そこで本研究ではカマツカ属魚類の種間交雑および遺伝子浸透の現状を明らかにすることを目的とし,約40地点から得られたカマツカ属魚類約150個体を対象にMIG-seq法によるゲノムワイドSNPデータを取得した.PCA,ADMIXTURE解析,Triangle Plot解析の結果,分布とmtDNAの情報から交雑が予想されたほとんどの地点において遺伝子浸透の証拠が見いだされた.特に,カマツカとナガレの同所生息域では両方の種へ戻し交配する傾向がみられ,これら自然で同所的に出現する2種の間では生殖隔離機構が不完全な場合があることが示唆された.また,カマツカとスナゴの人為交雑域では遺伝子浸透の様相が河川ごとに大きく異なり,スナゴへの戻し交配がみられる地域,逆にカマツカへの戻し交配がみられる地域,そして両種の大規模な混合がみられる地域が認められた.このような交雑パターンの多様性は,カマツカの移入数や受け手のスナゴの集団サイズが影響した可能性があるが,より詳細な検証が必要である.