| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-034 (Poster presentation)
熱帯アジア原産の侵略的外来種アシジロヒラフシアリは、南西諸島や小笠原諸島・伊豆諸島などに侵入・定着し、近年大きな問題となっている。特に八丈島では、生息する複数のコロニー間で敵対性がなく、スーパーコロニーを形成していると考えられる。スーパーコロニーの形成要因は、元来のコロニーの繁殖体制(単女王・多女王制)に加え、遺伝的ボトルネック仮説や生態的解放仮説が提唱されているが、八丈島での本種について詳細に検証された例は少ない。アリ類コロニー間での敵対性は巣仲間認識に基づくもので、その認識に体表炭化水素(CHC)の関与が指摘されている。一般にCHC組成は種特異性を示すが、アリ類ではその成分組成比(CHP)が巣仲間間で統制されており、コロニー特異性を示す。八丈島内での本種の敵対性低下は、CHPのコロニー特異性の低下による可能性がある。本研究では、この仮説を検証するため、沖縄・鹿児島・八丈島で採集した本種ワーカーの行動に基づく敵対性試験と合わせて、各コロニーの巣仲間間及びコロニー間でのCHC比較を行った。事前にワーカー1匹を移したシャーレに別コロニーワーカー1匹を導入し、双方のワーカーによる噛み付き・威嚇などの敵対的行動を評価した敵対性試験を実施したところ、沖縄・鹿児島のコロニーの組合せでは強い敵対性を示した。八丈島コロニーは他県コロニーに敵対性を示す一方、島内コロニー間での敵対性は有意に低かった。またガスクロマトグラフ分析は、島内コロニー間のCHP類似性が非常に高いことを示したが、島内でCHC組成そのものが異なる2系統のコロニー集団の存在も明らかにした。このCHC二型は、沖縄・鹿児島採集コロニーでも確認されたことから、八丈島でのスーパーコロニー形成要因の検証にはCHC二型の影響を考慮する必要があると同時に、現在Technomyrmex brunneusとされている種について、その形態や生態・行動を再検証する必要がある。