| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-035  (Poster presentation)

物理的環境がため池の侵略的外来種3種に及ぼす影響【A】
Effects of physical environment on three invasive alien species in irrigation ponds【A】

*佐藤蘭, 上原春香, 遊佐陽一(奈良女子大学)
*Ran SATO, Haruka UEHARA, Yoichi YUSA(Nara Women's University)

ため池は単位面積当たりの生物種数が多く、生物多様性の維持に重要な役割を果たしている。一方、近年ではため池への侵略的外来種の侵入が各地で確認されており、保全のための適切な管理が求められている。本研究では、多数のため池が分布する奈良県北部の奈良盆地において、11か所を対象に侵略的外来種の侵入を助長する物理的環境を明らかにすることを目的とした。調査では、侵略的外来種の捕獲数(設置の翌朝回収したトラップ当たりの個体数)とそれ以外の種の捕獲数を記録し、物理的環境要因として池の面積、冬場の池干しの有無、および生息地の環境改変の指標となるコンクリート護岸の程度(池の側面にコンクリート護岸されていない部分が残っているか)について記録した。その結果、侵略的外来種(アメリカザリガニProcambarus clarkii、ウシガエルLithobates catesbeianus、スクミリンゴガイPomacea canaliculata)は、池の面積が小さいほど、また池干しが行われている池ほど個体数が多いことが示された。一方、侵略的外来種以外の種では、面積が小さいほど、また池干しが行われている池ほど個体数が少ないという対照的な結果が得られた。なお、侵略的外来種とそれ以外の種のどちらにおいても、コンクリート護岸との間に有意な関係は認められなかった。以上より、小規模な池や池干しによる攪乱の存在下では、在来種等による生物的抵抗が弱く、侵略的外来種の侵入を促進している可能性が示唆された。一方で、面積が大きく池干しを行わない場合では、生物的抵抗が維持されることで侵略的外来種の侵入が抑制されていると考えられる。本研究の成果は、池の生態系保全において、侵略的外来種の直接的な駆除に加え、生物的抵抗を維持するための池の規模や管理方法を考慮する必要があることを示している。


日本生態学会