| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-036 (Poster presentation)
外来生物問題は、生物多様性に対する第3の危機として特に憂慮されており、動植物の絶滅事例の約6割が侵略的外来生物によるものとされる。その一方で、地域生態系への影響については、農作物被害といった人間社会にもたらす負の影響と比べ研究例が少ない。侵略的外来生物の中でも、北米原産のアライグマは、農業被害や住宅等の汚染のほか、病気の媒介等の様々な影響をもたらす種として悪名高い。また、湿地を好む性質上、捕食を介した水生生物や在来生態系への影響も懸念される。このことから、本種は特定外来生物に指定され、様々な対策が講じられている。効率的な管理・駆除を目指す上では、たとえば本種の侵入・定着により新たに生じる捕食圧の質的・量的な変化といった生態影響等の理解は欠かせない。しかし、本種の生態についてはこれまで、行動圏(水辺利用の頻度)に関する情報が散見される程度で、在来哺乳類との行動様式の違いや水辺利用の質的な違い(たとえば、水中での捕食行動の頻度など)といった、リスク評価や管理上重要な、本種の生態特性の理解はほとんど進んでいない。そこで本研究では、アライグマの生態情報のうち、特に本種の水辺利用特性の理解を通じて在来生態系の保全につなげることを目的とする。
本種と在来哺乳類を対象に、水の有無による湿地の利用頻度を比較するほか、湿地を池の中心から同距離に3エリア(岸辺、池(浅)、池(深))に区分し、各エリアにおける本種の利用頻度と捕食行動の割合、ならびに滞在時間を調査した。その結果,アライグマは在来哺乳類と比べて、池のない湿地より池のある湿地で長時間滞在することが明らかとなった。また、湿地の利用頻度を比較したところ、春~秋にかけて、本種は岸辺や特に浅瀬(採餌目的)の利用が多い傾向にあった。これは、当該時期は浅瀬を利用する生物群集が本種による捕食圧の影響を強く受ける可能性を示唆している。