| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-037 (Poster presentation)
スクミリンゴガイPomacea canaliculataは田植え後の苗を食害する南米原産の侵略的外来種である。地球温暖化の影響により冬季の寒さが緩和されたことで、本種はより広範囲で越冬可能となり、その被害は年々深刻化している。本種によるイネの被害にはさまざまな要因が影響すると考えられるが、本研究では、特に温暖化をはじめとする気候変動によって直接的な影響を受けやすい水深と水温に着目し、水深、水温とスクミリンゴガイの摂食との関係の解明、および温暖化に伴うスクミリンゴガイによるイネの被害量を予測するモデルの構築を目的として、屋内実験と圃場実験を行った。
屋内実験では、水深(1および4 cm)と水温(15から40℃まで5℃刻み)を組み合わせた12条件下でスクミリンゴガイによるイネの被害量を記録し、二項分布とロジットリンクを用いて一般化線形混合モデル(GLMM)で解析した。その結果、被害量は時間の経過とともに増加し、水深および水温の上昇に伴いその程度が大きくなることが示された。圃場実験では、熊本・大分・福岡・岡山・奈良の計24筆の圃場において、水深、水温、圃場内の貝の密度と貝のサイズ(殻高)を測定し、田植え約3週間後のイネの欠株率を調査した。欠株率について、圃場の水深、水温、貝密度と貝サイズを説明変数とし、屋内実験と同様の方法で解析した。その結果、水深、水温と貝密度は欠株率に有意な正の影響を及ぼしたが、貝サイズは有意な影響を示さなかった。
以上より、スクミリンゴガイによるイネの被害は水深と水温の影響を大きく受け、温暖化の進行に伴い被害が拡大する可能性が示唆された。本研究で開発した被害量モデルを活用することで、農薬を散布するべきかどうかを事前に把握し、過剰な農薬使用量の削減に貢献することが期待される。