| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-038  (Poster presentation)

日本在来ヒナモロコは本当に絶滅したのか:環境DNA分析による網羅的探索【A】
Has the native population of Aphyocypris chinensis (Hinamoroko) in Japan really gone extinct? A comprehensive environmental DNA survey【A】

*片山優太(京大院理), 辻冴月(京大院情報), 中島淳(福岡県保環研), 渡辺勝敏(京大院理)
*Yuta KATAYAMA(Kyoto Univ. Sci.), Satsuki TSUJI(Kyoto Univ. Informat.), Jun NAKAJIMA(Fukuoka IHES), Katsutoshi WATANABE(Kyoto Univ. Sci.)

 コイ科のヒナモロコは日本で最も絶滅に近い小型淡水魚の一種である。本種は開発による生息地の喪失に加え、近縁外来種キクチヒナモロコ(以下キクチ)との交雑が深刻化しており、既知の生息地や飼育集団において純粋な在来個体群は確認されていない。本種の生息地周辺には複雑かつ広大な水路網が形成されており、従来のたも網やトラップによる採捕調査では、労力や時間の制約から網羅的調査が困難であった。本研究では、環境DNAを用いた網羅的調査により、ヒナモロコとキクチの分布実態を解明するとともに、ヒナモロコをはじめとした在来魚類全体の多様性を制限する環境・生物的要因を推定することを目的とした。有明海流入河川の198地点で、魚類網羅的な定量メタバーコーディング(qMiFish)と、ヒナモロコ・キクチを特異的かつ同時に検出する環境DNA調査を実施した。その結果、キクチは計3地点で検出された。うち2地点ではqMiFishおよび種特異プライマーで検出され、他の1地点では種特異プライマーでのみ検出された。後者の1地点は新規確認地点であった。メタバーコーディングによる結果を用いたHierarchical partitioning解析を行った結果、水質悪化や植生消失などの環境劣化が生息魚種の減少に影響した可能性が示唆された。また、外来種の存在は在来種の出現率に負の影響を与えている傾向が見いだされた。以上より、ヒナモロコをはじめとした在来魚類の消失には、生息環境の劣化と外来種による直接的な排除の両方が関与しうることが示唆された。今後の保全施策においては、ヒナモロコを環境再生のシンボルとしながら、在来魚類群集が生息できる環境を整えるために、水質改善や植生の再生と外来種管理を同時に進める統合的アプローチが必要だろう。


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