| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-042 (Poster presentation)
侵略的外来種は侵入先の環境に短期間で適応し、分布を拡大させる。また、生物の環境への適応には、生物的・非生物的な要因に加えて、土地利用の改変などの人間活動も関係することが知られている。すなわち、人間活動が侵略的外来種の適応動態にもたらす影響を明らかにすることは、生態系管理と生物の迅速な適応の理解に寄与する。そこで、本研究は小笠原諸島父島に高密度で生息する外来種グリーンアノール(Anolis carolinensis)を用いて、人間活動による撹乱が形態と行動にもたらす影響を調査した。島内の森林部(非撹乱地)と主要道路沿い(撹乱地)を車両通行の有無で分類し、調査地とした。まず、形態指標にFluctuating asymmetry(FA)を用いて、それぞれのサイトで計測を行った。撹乱地では本種への高い人為的なストレスにより、不規則で高い左右非対称性を持つと予想したが、撹乱の有無ではFAに有意な差は見られなかった。しかし、撹乱地内の詳細な比較では、高撹乱地において大腿骨長と脛骨長の左右差間に負の相関が見られた。また有意ではないものの、中撹乱地でも同様の傾向が見られた。これは、後脚の局所的な非対称性を後脚全体で相殺していることを示唆している。行動指標にはFlight initiation distance(FID)を測定した。交通量はFIDに影響を及ぼさなかったが、個体の姿勢がFIDに影響し、地面に対して垂直な個体はFIDが短くなる傾向があった。これは採餌や繁殖の機会を確保するために逃避開始を最大限遅らせる戦略と考えられる。これらの結果は、本種が侵入先にあたる父島で、人為的な環境ストレスに対する高い耐性を持つことを示している。本研究は、外来種の高い侵略性の解明に貢献するとともに、小笠原のような希少種を擁する生態系において、人間活動が野生生物に及ぼす影響を評価する重要性を示唆している。