| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-054  (Poster presentation)

カエル類の個体数に影響する土地利用および圃場管理要因の評価【A】
Evaluation of land-use and field management factors affecting frog abundance【A】

*帯島広夢, 西川潮(金沢大学)
*Hiromu OBISHIMA, Ushio NISHIKAWA(Kanazawa university)

農薬や化学肥料の過剰使用は水田の生物多様性に負の影響を与えることが知られており、水田生態系の保全の観点から、化学物質を用いずに水稲を栽培する有機栽培が注目を集めている。なかでも自然栽培は、農薬・化学肥料を使用せず、移植後には有機質肥料も投入しない低投入型有機農法であり、生物多様性への正の効果が期待されている。しかし、慣行栽培から自然栽培への移行年数の違いが水田生態系に及ぼす影響は、節足動物を対象とした研究に限られており、捕食者であるカエル類に関する知見は乏しい。そこで本研究では、自然栽培への移行年数の違いが準絶滅危惧種トノサマガエル(Pelophylax nigromaculatus)個体群に及ぼす影響を、水路構造や畦畔植生などの局所環境要因および周辺土地利用の影響とあわせて明らかにすることを目的とした。石川県羽咋市の慣行栽培田7筆、および慣行栽培からの移行年数の異なる自然栽培田17筆(1〜12年目)の計24圃場において、幼体(当年上陸個体)と成体の生息数調査を行い、負の二項分布を仮定した一般化線形モデルを用いて、トノサマガエル幼体・成体の生息数と環境要因との関係を解析した。その結果、トノサマガエル幼体の生息数は、水田周囲半径150 mの草地面積率が高い地点ほど多く、また、慣行栽培田と比べて自然栽培田で多かった。さらに空間的自己相関の影響も認められた。一方、トノサマガエル成体の生息数は、畦の草丈が高く、田面水の水深が深く、圃場脇の水路高が低く、自然栽培への移行年数が長い圃場で多かった。以上より、トノサマガエルの保全には、慣行栽培から自然栽培への転換、自然栽培の長期継続、畔草管理、圃場周辺の草地管理・創出、ならびに水田群単位での保全対策立案の重要性が示唆された。


日本生態学会