| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-056  (Poster presentation)

コオニタビラコ(春の七草のホトケノザ)はなぜ減っているのか?【A】
Factors affecting the decline of Lapsanastrum apogonoides (one of the Seven Herbs of Spring)【A】

*龍田大輝, 中坪孝之(広島大学)
*Daiki TATSUTA, Takayuki NAKATSUBO(Hiroshima Univ.)

 コオニタビラコ Lapsanastrum apogonoides (Maxim.) J.H.Pak et K.Bremer は水田に生育するキク科の越年草で、春の七草の「仏の座」として知られているが、近年減少傾向にあり、東北、北陸の一部地域ではレッドリストに掲載されている。本研究では本種のフェノロジーと発芽に対する温度条件の影響について調査し、近年の温暖化や耕作スケジュールの変化がコオニタビラコの繁殖に与える影響について検討した。
 広島県東広島市の水田において、コオニタビラコの様子を2025年3月~7月にかけて観察した結果、4月上旬に開花し5月~6月にかけて結実することが確認された。
段階温度法(鷲谷 1997)を用いて発芽に対する温度の影響について調べた結果、本種の発芽には一度高温を経験し、温度が20℃あたりまで低下することが必要であることが示唆された。このことは屋外で行った栽培実験においても確認された。なお乾燥保存した種子ではほとんど発芽が見られなかった。
 東広島市の気象データ(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)を用いて近年の温暖化の影響を検討したところ、1980年~2025年において気温が20℃を下回るのが約1カ月遅くなっていたことから、温度上昇によってコオニタビラコの発芽時期が遅くなっていると推測された。
 開花、結実時期に関しては日長に影響を受けている可能性が高いが、本種が開花する4月~6月は温暖化により早期化した田植え時期と重なっている。特に東北・北陸地方では田植え時期の早期化が顕著であり、これが当該地域でのレッドリスト掲載と関係していると推測される。今後気候変動の更なる進行や耕作スケジュールの変化によって、他の地域でも本種の減少が起こる可能性がある。


日本生態学会