| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-057  (Poster presentation)

絶滅危惧植物ミコシギクが生育する湿地群落の種組成と季節変化:広島県の例【A】
Study on seasonal changes of wetland vegetation surrounding the endangered species Leucanthemella linearis in Hiroshima Prefecture【A】

*國井秀剛, 中村創, 大河夢叶, Chi Q. PHAN, 竹内史, 小山克輝, 中原-坪田美保, 塩路恒生, 清水則雄, 坪田博美(広島大学)
*Hidetaka KUNII, Hajime NAKAMURA, Yuto OKAWA, Chi Q. PHAN, Fumito TAKEUCHI, Yoshiki KOYAMA, Miho NAKAHARA-TSUBOTA, Tsuneo SHIOJI, Norio SHIMIZU, Hiromi TSUBOTA(Hiroshima University.)

 湿地は稀少な動植物を多く有する生態系であるが、近年は土地利用の変化や開発などを受けて世界的に減少している。ミコシギクLeucanthemella linealis (Matsum.) Tzvelevは湿地に生育するキク科の多年生草本である。本種は生育環境の消失などによって減少しており、環境省RDB(2025)では絶滅危惧IB類(EN)に選定されている。広島県東広島市には数少ない自生地の一つが残されているが、ニホンジカの影響により一時的に個体数が大幅に減少したため、防護柵の設置などの保全活動が現在行われている。本研究では今後の本種の保全に資する基礎情報を得ることを目的とし、これまで詳細な調査が行われていない自生地のフロラおよび植生調査を行った。フロラ調査は2025年に湿地及びその周辺の森林を対象に行った。その結果、カヤツリグサ科とイネ科の種が最も多く確認された。帰化率は5.9%であり、現時点での帰化植物による影響は小さいと考えられる。また、植生調査は防護柵内,防護柵外,防護柵外に新たに柵を設置した区画(新設柵内)で2025年の春から秋にかけての月ごとに行った。その結果、高茎湿原、低茎湿原、乾燥地の3タイプの植生が確認された。ミコシギクの生育する植生は先行研究同様、ヌマガヤやチゴザサの生育する高茎湿原であり、主に防護柵内にあった。防護柵内ではミコシギクだけでなく、防護柵外では見られなかった種の生育も確認された。低茎湿原と乾燥地の植生は主に防護柵外で確認され、いずれもニホンジカによる影響を受けていると考えられる。新設柵内の植生は防護柵内と類似した植生であった。各調査地点の出現種数には季節間での大きな変動は認められなかった。以上より、防護柵の設置はミコシギクを含む湿原植物の生育環境の改善に寄与している可能性が示唆された。今後は防護柵の拡張の検討および湿地の乾燥化に留意してモニタリングを継続するとともに、本種の生育に関わる環境要因を明らかにしていく予定である。


日本生態学会